最も大切な
あるお爺さんが小学生だった時の話。
よく家に遊びに行ってた友達がいて。少し狭めのたぶん賃貸のアパートに住んでいた。
遊びに行くと太めで(ごめんなさい)愛想の良いお母さんがいつもお菓子なんかを出してくれた。
お母さんはいつもエプロンをしていた。うちは母も祖母も全くエプロンせずに家事をしていたので、まさにサザエさんみたいで少し羨ましかった。
でその子とお母さんはまったく同じすごい甲高い声をしていて(男子です)、子供心にも微笑ましかったのを覚えている。
お父さんはタクシーの運転手をしていて、彼はタクシーや車のことをよく教えてくれた。そんな彼の様子はお父さんに誇りを持ってるように見え、こちらも微笑ましかった。
そんな彼がある日突然クラスでのあいさつもせずに転校した。
あまりに突然のことでみんなもそのことに触れがたい感があって話をせずにいた。
そのうち友達の一人が、彼のお父さんが女性を殺害して逮捕されたという情報を持ってきた。その時は聞いていた他の友達も一言も話せなかったと思う。テレビのニュースでも報道され、見た時に鳥肌になった。何の感情だったのか、今でもわからない。
ただ今でも思う。その時彼は、お母さんはどれだけのショックを受けたのだろう、どんな気持ちで引っ越ししたのか。そのあとどうやって暮らしたのだろう。今はどうしているのか。
坂本龍馬も吉田松陰も志を持って維新の士と成り得たわけだが、脱藩の罪科の及ぶ当時で残された家族はどういう気持ちだったのか。
庶民派の爺々には「その後」が心配になってしまう(小者だがまあ仕方がない)。